スマホやネットは禁止!

ニュージーランドでの18週間の取り組み

Overseas Education News #02 The Power of Offline

日本では今、学校教育のデジタル化が急速に進んでいます。しかし、世界屈指の教育先進国ニュージーランドでは、それとは真逆の「デジタルを完全に遮断する」教育が注目を集めています。

生徒が半年間が大自然の中で集団生活?

日本の教室では1人1台のタブレットやパソコン端末が当たり前になりつつありますが、ニュージーランドの私立校「St Paul’s Collegiate School」が運営するプログラムは、その対極を走っています。「Tihoi Venture School」では、生徒が半年間、スマートフォンもインターネットもない大自然の中で集団生活を送ります。

日本では、パンデミックの影響や、より理解度を深める学習支援の観点から「いかにデジタルを使いこなすか」に焦点が当たっていますが、この取り組みでは「いかにデジタルから離れるか」が教育の核心です。意図的に「不便」を設計することで、情報の波に依存しない人間本来の強さを呼び起こそうとしています。

正解への「最短ルート」を封鎖

検索すれば数秒で答えが見つかる現代において、このプログラムはあえて正解への「最短ルート」を封鎖します。インターネットがない環境では、生徒は自分の頭で考え、仲間と議論して問題を解決するしかありません。SNSという逃げ場がないからこそ、生身の人間同士の「衝突」と「和解」を経験し、深い対人スキルを学びます。

日本の教育現場においても「非認知能力」の重要性が叫ばれていますが、日常生活はデジタルに浸かりきっています。ニュージーランドの事例は、「本当の思考力や対人力は、孤独や退屈、そして対面での摩擦の中でしか育たないのではないか」という鋭い問いを私たちに突きつけます。

ニュージーランド独自の学校文化

なぜ、このような過激とも言える教育が成立するのでしょうか。そこには、ニュージーランド独自の学校文化があります。ニュージーランドでは、私立学校が「教育の実験室」としての役割を担っています。公教育では難しい大胆な試みを行い、その価値を社会に発信することが期待されています。

一方、日本の私立校も独自の教育を掲げますが、入試制度などの制約も多いのが現状です。ニュージーランドで「半年間ネット断ち」という大胆な選択ができる自律性は、「教育とは、変化する社会に合わせるだけでなく、社会の欠落を補う場所であるべきだ」という強い意志を感じさせます。

テクノロジーは決して悪ではありません。しかし、ニュージーランドのオフライン環境で行われているこの試みは、私たち大人に一つの視点を与えてくれます。

子どもたちが「自然とつながること」「他者との深い絆を育むこと」「自分自身との対話を繰り返すこと」を、知らず知らずのうちに私たち大人が断ち切らせてはいないでしょうか。

デジタルの便利さを享受する今だからこそ、あえて「つながらない時間」を家庭や教育の中にデザインする勇気が求められているのかもしれません。