「〇〇さんは暗記系が強く、テストの点数も安定しています。」

いわゆる「賢い」といわれる子どもは、学習塾などで先生方からこのように言われます。
これまでの学校教育等において、暗記力は「努力の証」であり、学力の中心とされてきました。しかし今、私たちは一つの問いに向き合う必要があります。

AIが人間以上の精度で暗記をこなす時代に、暗記を軸にした学びを続けることが子どもの未来につながるのでしょうか。

生成AIの登場により、私たちの生活は急速に変わり始めています。質問をすれば瞬時に答えが返ってきます。専門用語や分析など、情報はほぼ網羅され、論理的な構成かつ丁寧な表現で提示されます。

これはつまり、人が「知識をたくさん覚えていること」そのものの価値が相対的に下がっているということを意味します。もちろん、知識が不要になるわけではありません。しかし、「知識を持っているだけ」で評価される時代は、確実に終わりに近づいています。今現在、社会人では通用しません。

暗記中心の学習には、もう一つ見過ごされがちなリスクがあります。それは、「考えなくても成果が出てしまうこと」です。「とにかく覚えれば点が取れる」「理由が分からなくても正解できる」といった経験は、私たちにも身に覚えがあるのではないでしょうか。

このような学習を続けていると、子どもは次第に「考える前に正解を探す」「すぐに答えが出ないなら調べればいい」という姿勢を身につけます。「考えること」が抜け落ちてしまうのです。AI時代に「調べる力」は確かに重要ですが、それだけでは不十分なのです。

では、AIにはできず、人間に求められる力とは何でしょうか。
それは、

・情報をどのように使うかを考える力
問いを立てる力
・複数の情報を結びつけ、自分なりの意味を見出す力

です。これらは、暗記だけでは身につきません。正解のない状況で迷い、試し、失敗しながら育まれる力です。

暗記をすること自体は脳を鍛える点において非常に意味のある学習活動です。暗記は、考えるための「材料」を頭に入れる活動であり、体験や経験と併せて脳の長期記憶に情報を格納するうえで欠かせない活動です。

問題なのは、暗記が学びのゴールになってしまうことです。「覚えた知識を、どう使うのか」「なぜその知識が必要なのか」「別の場面ではどう応用できるのか」といった問いが伴わない暗記は、AIに最も代替されやすい学習と言えるでしょう。

暗記に留まらせない家庭でできることをご紹介します。
あるテーマについて会話をしている際に、次の問いを投げかけると良いでしょう。

・「それ、どういう意味?」と聞く
・「もし別の場面だったら?」と問い返す
・「それを使って何ができそう?」と考えさせる

このように大人が問いかけることで、子どもの知識は「より生きた知識」となるでしょう。大人がうまく導くことで子ども達の思考回路は自然に形成されます。私たち大人も、子どもと一緒に「AI時代」を楽しみたいものです。