
第10回 感じてみよう「対句」のリズム

古典原文
国破れて 山河在り
城春にして 草木深し
―「春望」(杜甫)
現代語訳(小学生向け)
国がほろびてしまっても、山や河は昔と変わらずそのままだ。
城あとには春が訪れて、草木がしげっている。
子ども向けの解説
みなさんは「対句」という言葉を聞いたことがありますか。
対句とは、文章や詩の表現技法の一つで、「リズムや組み立てが似ている表現を並べる」方法です。言葉で説明すると少し難しいですね。でも、この対句という表現は、いろいろな所で使われているのです。
たとえば、「桃太郎」の
「おじいさんは山へしばかりに、おばあさんは川へせんたくに」
という表現は対句といえますね。ここでは「○○は、○○へ、○○に」という大きな文の形は同じで、中身の言葉が違っています。
ことわざにも
「壁に耳あり、障子に目あり」
「帯に短し、たすきに長し」
「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」
と、対句を使ったものがありますね。
以前に触れた平家物語の中にも、対句表現は多く見られます。
今回取り上げたのは、昔の中国の詩(漢詩)ですが、漢詩には聞き心地をよくするための工夫がたくさん見られます。その影響を受けた日本の古文の中にも、対句を使った表現はたくさんあるのです。
ところで、この対句になっている表現、聞いているとリズムよく感じませんか。
似ている部分がリズムを生み出すのかもしれません。
対句は見るよりも、声に出す、耳で聞く方が心地よく感じるものです。だから、対句は歌の中にも数多く取り入れられています。 身の回りの表現に、どんな対句表現が使われているのか、探してみると面白いですよ。
学校の張り紙の中にもあるかもしれませんよ。

親世代・祖父母世代向けの解説

「春望」は「詩聖」と呼ばれ、詩仙李白と並ぶ、中国の詩人の巨頭である杜甫の作品です。
この「春望」の詩は、戦乱の中、荒廃した長安の景色を見て、悠久の自然の世界と、儚い人間の世界を対比させて歌った詩です。
また、終わらない戦乱、家族への思い、自分が老いたことに対する複雑な思いも表現されています。
「春望」に限らず、漢詩では対句の規則などもありますが、また漢詩には「韻を踏む」という規則もあります。
特定の行の語尾の音をそろえるという決まりですが、この押韻の技法は今の歌にも多く取り入れられています。英語の歌詞にも多く見られます。

さまざまな歌の中に取り入れられている対句や押韻を、お子様とともに一緒に探し、どんな感じを受けるか話し合ってみるとよいかもしれません。
お子様の今お気に入りの曲の中にも、隠されている工夫を一緒に見つけてあげてみてください。
記事作成者

長尾 一毅 (ながお かずき)
15年以上にわたり小・中・高校生の国語指導を担当。読解力こそ全教科の基盤と考え、集団授業から個別家庭教師まで多様な教え方を実践し、生徒の理解度に応じた指導を行う。脳科学の知見を交えた問いかけと対話を重ねることで、「自分で考え抜き、答えを導き出す」習慣を育む指導に定評がある。
