問題は「本人」か「環境」か?
国連が日本に勧告した、フィンランド流「逆転の発想」

Overseas Education News #03 Inclusive is the Standard

「インクルーシブ教育(障がいの有無に関わらず共に学ぶ)」という言葉は、日本でも定着しつつありますが、実は2022年、国連は日本の教育現場に対し「今のままでは不十分」とする是正勧告を出しました。

なぜ日本の努力は評価されにくいのでしょうか?その答えは、教育先進国フィンランドが大切にしている「社会モデル」という視点にあります。

最も大きな違いは、捉え方(モデル)

最も大きな違いは、「何が問題なのか」という捉え方(モデル)にあります。日本の「個人モデル」では、「障がいがあるから、特別な訓練をして社会に適応しよう」と考えがちです。つまり、本人が変わることに重点が置かれます。一方、フィンランドの「社会モデル」では、「階段しかないから車椅子の人が通れない。悪いのは本人ではなく、階段を作った社会だ」と考えます。

日本では「みんなと同じようにできない子」への支援に注力しますが、フィンランドでは「その子ができない仕組みになっている環境」の方を見直そうとします。問題の所在を180度転換させる、まさに「逆転の発想」です。

目指すゴールは同じでも、そのプロセスには国民性の違いが現れています。日本では、「特別支援学級」など、場所を分けることで最適化を図ってきました。一方のフィンランドでは、最初から「誰もがアクセスできること」を前提にシステムをデザインします。

日本は2014年、フィンランドは2016年に障がい者権利条約を批准しましたが、国連が日本に厳しいのは、日本が「分けることで守る」という形に固執しすぎているからかもしれません。フィンランドは、最初から「分けなくて済む構造」を追求しています。

子どもへの接し方にも大きなヒント

この違いは、日々の家庭での子どもへの接し方にも大きなヒントを与えてくれます。「うちの子、これが苦手なんですが、どうすれば克服できますか?」という質問をする人が多い日本に対して、フィンランドでは「この子がこれを楽しめないのは、周りのどんな壁(ルールや環境)が邪魔をしているからだろう?」と考えます。

つまり、国連による日本への勧告は、制度の批判ではなく、私たちの「視点」への投げかけです。苦労している子どもに対して、「頑張って合わせなさい」と言う前に、「社会の側の壁」を一つでも減らせないかと考えるというのが、フィンランドが世界に示している姿勢です。

フィンランドの事例は、私たちに「本質的な優しさ」とは何かを問いかけているようです。できないことを本人のせいにせず、仕組みの欠陥として捉えています。この「社会モデル」の視点を私たちが持つことで、学校や家庭はもっと過ごしやすい場所になるのではないでしょうか。