
「やりたいことがない」子どもは、本当に問題なのか?
将来不安の時代に考える“好き”との向き合い方
「やりたいことがない」子どもは、
本当に問題なのか?
将来不安の時代に考える
“好き”との向き合い方
夢を語れる子は前向き?
「うちの子、将来やりたいことがないんです。」
保護者の方から、この言葉を聞く機会は少なくありません。
進路の話題になると、「夢は?」「将来は何になりたいの?」と大人は問いかけます。しかしその問いに、子どもがすぐに答えられるとは限りません。むしろ、「まだ分からない」と答える子どもの方が実際には多いのではないでしょうか。

私たちの社会には、「やりたいことがある人は立派だ」という空気がどこかにあります。
夢を語れる子は前向きで、語れない子は意欲が低いのではないか。そんな見方が、知らず知らずのうちに広がっているようにも感じられます。
しかし本当に、「やりたいことがない状態」は問題なのでしょうか。
興味を持つ経験がどれだけあるか
子どもが将来の目標をすぐに持てないこと自体は、決して珍しいことではありません。人は多くの場合、さまざまな経験を重ねる中で、自分の関心や適性を少しずつ見つけていきます。小学生や中学生の段階で、人生を通じて続けたいことを明確に言える方がむしろ例外に近いとも言えるでしょう。
それでも「やりたいことを見つけなさい」と急かされると、子どもは次第に戸惑い始めます。周囲の友達が夢を語っていると、自分だけ取り残されたように感じることもあります。すると、心の中ではまだ固まっていないのに、無理に答えを作ろうとすることがあります。そうして生まれた目標は本当に自分のものではないため、長続きしないことも少なくありません。
そもそも「やりたいこと」という言葉は、とても大きな意味を含んでいます。仕事として何をするのか、どんな人生を送りたいのかという問いは、大人にとっても簡単なものではありません。それを早い段階で決めることが、必ずしも子どもの成長にとって良いとは限らないのです。
大切なのは、「やりたいことがあるかどうか」よりも、「興味を持つ経験がどれだけあるか」です。さまざまなことに触れ、自分なりに面白いと感じたり、疑問を持ったりする経験の積み重ねが、やがて関心の方向を形づくっていきます。最初から明確な夢があるわけではなく、経験の中から少しずつ芽生えてくるものなのです。
興味を広げることを大切に
また、子どもが「やりたいことがない」と感じる背景には、選択肢の多さも関係しています。現代は情報が豊富で、職業や進路の可能性も広がっています。その一方で、どれを選べばよいのか分からず、決めること自体が難しくなることもあります。未来の選択肢が多いほど、目標を一つに絞ることは簡単ではなくなります。
大人ができることは、答えを急がせることではありません。むしろ、「何が好きか」「何が気になるか」を一緒に探していく姿勢が大切です。興味を持ったことを話題にしたり、新しい体験に触れる機会を作ったりすることで、子どもは自分の内側にある関心に少しずつ気づいていきます。

重要なのは、「夢を見つけること」を目標にするのではなく、「興味を広げること」を大切にすることです。興味の種が増えれば、その中から自然と深く関わりたいものが生まれてきます。やりたいことは、突然見つかるというより、時間をかけて育っていくものなのです。
「やりたいことがない」という言葉の裏側には、「まだ見つかっていない」という可能性が隠れています。それは決して後ろ向きな状態ではなく、むしろこれから多くの可能性に出会える「お楽しみ」と言えるのではないでしょうか。

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