
しつけと発達【令和版】
「しつけのできていない子ども」が増えている?
近年、「叱らない子育て」からの、「しつけのできていない子ども」が増えているのではないかと言われています。あなたの周りでも、「あの家の子はしつけができていない」という声を耳にすることがあるでしょう。スーパーなどの店内で走り回ったり、商品を触ったり…でも、親は知らん顔、という場面に出会ったとき、「しつけ」について考えさせられることはありませんか?

そもそも、子どもにとって「しつけ」とは、なぜ必要で、どんな役割を持つのでしょうか。
正解はありませんが、ひとつとして、子どもに、他者と生きる上で必要な決まりや言動、振る舞いである「社会性」を覚えてもらうことであるといえます。
受験は学習量だけで結果が決まるわけではありません。
脳の発達としつけ
子どもの脳の発達において、社会性は「他者との関わりを通して少しずつ育つ領域」と言われます。子どもにとっての最も身近な社会とは、家族であり、これは社会の最小単位。家庭でのしつけは、社会への入り口そのものとなります。
幼児期の脳はまだ未成熟なもの。特に感情や衝動を調整する機能は幼児期から学童期にゆっくり育ち、成熟するのは、なんと成人ごろとも言われます。
そのため、子どもが自らの欲求を通そうとするのは、当たり前の姿。極端な例で言えば、乳児は「お腹が空いても外で泣いてはいけません」といっても、もちろんできません。やる気がないのではなく、まだ発達途中なのです。
しつけとは、この未発達な部分を、社会の一員としての親との関わりを通し、少しずつ整えていく働きかけです。
子どもたちは、親からの「しつけ」という物事の伝達を通して、「こうすると安心する」「これはしてはいけない」と理解し、成長にしたがって脳の中で行動を選ぶ力を育てていくのです。
幼児期のしつけは、脳の発達を助け、子どもが将来自分で行動を調整できるようになるための基盤づくりなのです。
しつけが持つ意味
しつけで学ぶことは、言い換えれば社会で生活していくための「ルール」であるともいえます。
あなたも、日常生活の中で、「この人、常識がないな…」と感じる人と関わることがあるでしょう。そのとき、そっと距離を置くのではないでしょうか。注意しよう!と思うことは、きっとほとんどないはずです。大人になると、他者から振る舞いを注意されることはほぼありません。でも、マナーや礼儀ともいえる部分が欠けていることに対しては、年齢に応じて周りからの目は厳しくなっていくもの。
しつけとは、そうした“当たり前”のルールや暗黙の了解、ふるまいを身につけていくためのものでもあります。

関わりのポイント3つ
しつけでは、子どもの年齢・発達に合わせたルールを学ばせることが必要です。
親が感情をぶつける関わりでは、機嫌が良い日と悪い日で、同じ行動をしても怒られる日と怒られない日が出てきます。これでは悪いのは“子どもの行動”ではなく“親の機嫌”。子どもは「親の機嫌を伺うこと」が最適解になってしまいます。
「しつけ」では、同じ行動をすれば同じく叱られるという一貫性を持ちましょう。
重要なことは、子ども自身が悪いのではなく、「行為・行動」が悪かったと認識させることです。
- 同じ行動は必ず叱る
子どもにとって、一度で覚えることは難しいもの。繰り返し、一貫性を持った関わりが重要です。 - 叱るべき場面ですぐ叱る
子どもの記憶力・理解力によっては、後から叱っても行為と叱られた内容は結びつけられないことも。理由もわからず叱られた記憶だけが残るため、必ずその場ですぐに伝えましょう。 - 反省した様子であれば引きずらない
親は、叱ったあと不機嫌を見せず切り替えることが大切です。不機嫌を持続させることで、居心地が悪くなると、叱られた行為より自分自身が悪かったのではと感じてしまうことも。
脳が未発達な子どものうちは、どうしても目の前の行動を中心に理解しがち。そのため、親の一貫性、伝えるタイミングが鍵になります。
まとめ

しつけとは、やるべき事・やってはいけない事を教え、社会の中で生きていく術を伝えること。愛情を持って、ときに厳しく関わることを避けるのは、むしろ子どもの人生に対して無責任なのかもしれないですね。
いずれ親から離れ、自分の周囲にいる他者と生きていく子どもに、「しつけ」を通して必要な力を身につけてもらうための関わりは、子どもの先を見据えた、親にしかできない愛情表現ともいえるのではないでしょうか。
