前回、「IBとは何か」「なぜ人気なのか」「IB型の学力とは何か」について解説をしました。

「IB型の学力は魅力的だけれど、日本の受験とは相性が悪いのでは?」とお感じになった方もいらっしゃることでしょう。

考える力、問いを立てる力、表現する力を重視する「IB型教育」に対して、日本の受験では、限られた時間内で正確に答えを出すことが求められます。この二つはまるで正反対の方向を向いているように見えます。「IB型学力」と日本の受験は両立しないのでしょうか。

まず、なぜこの疑問が生まれるのかを整理してみましょう。「IB型学力」では、知識を覚えること自体よりも、その知識をどう使いどう考えたかを重視します。答えが一つでない問いに向き合い、自分なりの根拠を言葉で説明する力が中心です。

一方、日本の入試、とくに中学受験や高校受験では、短時間で多くの問題を処理し、ミスなく正解にたどり着く力が重要になります。このため、「じっくり考えるIB型」と「スピード重視の受験」は相反すると考えられがちです。

しかし近年、日本の受験そのものが変化していることは、あまり知られていません。

  • 資料を読み取り、複数の情報を関連づけて考えさせる問題
  • 理由や考え方を説明させる記述問題
  • 一問一答ではなく、思考の過程を問う設問

こうした問題は、以前よりも確実に増えています。大学入試や中高一貫校の入試では、「覚えたかどうか」よりも「理解しているかどうか」が問われる場面が多くなりました。つまり、日本の受験は少しずつ「IB型学力」に近づいているのです。

「IB型学力」と「受験対策」を両立できるかどうかは、どちらを優先するかではなく、どう組み合わせるかを考えることが重要です。よくある失敗は、「IB型学力=暗記不要」「受験対策=思考不要」と、極端に分けてしまうことです。実際には、受験にも一定量の知識は必要ですし、「IB型学力」も、知識がなければ深く考えることはできません。

考える力は「余裕がある子だけのもの」ではなく「全員に必要な基礎力」です。この視点を持てるかどうかが、両立の分かれ道になります。

「IB型学力」は、すぐに点数に表れにくい一方で、ある段階から受験において大きな強みになります。次のような力は「IB型学力」の中核となるものです。

  • 問題文の意図を正確に読み取る力
  • 条件を整理し、自分なりの解き方を組み立てる力
  • 記述問題で、考えを筋道立てて説明する力

成績が伸び悩んでいる子どもの多くは、知識が足りないのではなく、「どう使えばいいか分からない」という状態にあることが考えられます。「IB型学力」は、この壁を越えるにあたり良い助けになるでしょう。

保護者の中には、「考える学びをすると、受験勉強の時間が足りなくなる」と心配される方もいます。しかし問題は、時間配分そのものよりも「学びの姿勢」が分断されてしまうことです。
学校や家庭では「自由に考えていいよ」と言われ、塾では「この通りに解きなさい」と言われる。この切り替えがうまくいかないと、子どもは混乱します。

大切なのは、受験対策の中でも「なぜこの解き方なのか」「他の考え方はあるか」と問いかける視点を失わないことです。短期的に見れば、受験は点数がすべての世界です。しかし中長期的に見れば、考える力を持たないまま合格しても、その先で必ず壁にぶつかります。

受験のために思考力を犠牲にする必要はありません。また、思考力を育てるために受験を諦める必要もありません。「受験のための学び」と「生きるための学び」を分けないことが重要なポイントです。