現代の多くの子どもたちは、放課後から夜にかけてスケジュールが詰まっています。ある調査によれば、日本の小学校高学年(5・6年生)の51.2 %が「とても忙しい」または「忙しい」と回答しています。

What Japanese Children Actually Do and What They Wish To Do in Their Free Time
https://www.researchgate.net/

また、別の調査では、放課後に学校を出た後、「勉強・友だちと遊ぶ・外で遊ぶ」に使われる時間が平均45分程度にとどまり、テレビ視聴やゲームの時間がそれを上回る傾向にあることも報告されています。スマホが普及した現代において、動画視聴の時間を確保することも子どもの“忙しさ”の要因となっているようです。

こうした状況は、「習い事や宿題が多い」というだけでなく、子ども自身が「休む」「ぼーっとする」「自分で選ぶ」とったいわゆる「余白」を持てない構造と深く結びついています。保護者様が将来を見据えて「少しでも学ばせたい」「塾に通わせたい」と願うほど、逆に子どもが自分の時間を失う可能性もあるのです。「お迎え」「勉強」「塾」「習い事」という流れが無意識に当たり前になってしまう恐れがあります。

学びばかりがスケジュールを埋め尽くしてしまうと、子どもの主体性や創造性、対話の時間、自分で問いを立てる時間など、本来、子どもの時に身につけておきたい力が奪われてしまう可能性があります。「何もしない時間」「遊び」「対話」は、子どもが内省し、自分の考えを育むための土壌ともなります。

海外の教育先進国でも「授業時間を減らすだけでは十分ではない」「遊びや余白こそが育ちを支える」という論調が見られます。

Japan's lesson is clear: Simply reducing the school schedule is not enough for children's well-being
https://www.lemonde.fr/

神経科学の世界では、ぼんやりした状態の脳が行なっている神経活動のことを表すDMNがあります。DMNとは、デフォルト・モード・ネットワーク(Default Mode Network)の略語です。近年の脳科学研究では、DMNの働きは「創造性」と関係していることがわかっており、DMNが活発になると創造力が高まり、いろいろなアイデアが浮かびやすくなります。

大人の方にとってDMNが身近に感じられる例として、ぼーっと散歩しているときや、コーヒーを飲んで一息ついているとき、とりとめもないことを考えながらシャワーを浴びているときなどにふとアイデアが浮かぶことがあるのは、DMNの活発化によるものです。

DMNが正常に働くことで脳内の情報がスッキリと整理されます。また、蓄えられた情報がそれぞれ結びつきやすくなり、新しいアイデアが生まれるというメリットもあります。つまり、DMNが活性化すると、創造力が高まるのです。

このように、脳科学や神経科学の観点からも、忙しさからの解放を日常に取り込むことは子どもの健やかな成長に不可欠だといっても過言ではないのです。家庭において私たちにできることは、まず「子どもの時間割を見直す」ことです。

例えば、週1回でも「習い事なしの日」を設ける、帰宅後1時間は自由時間とするといった工夫が考えられます。その自由時間はメディア接触を避け、「自由・探究・対話の時間」とするなどの働きかけをすると良いでしょう。

「子どもが休む時間も教育の一部」という内容をメディアや自治体の方にも報じていただくことで、“忙しすぎる”子どもを守る土壌が作られるのではないかと考えます。