教育情報メディア「ACTIVE!」特別企画
こどもの「ワーキングメモリのタイプ」を見出すプロフェッショナル【第1部】
一般社団法人ワーキングメモリ教育推進協会
理事 野瀨まなみ さん
脳科学や神経科学の分野では日々新たなことが明らかになっています。「個別に最適な学習」は、教育・人材育成など人に関わる私たちにとって最重要のキーワードです。アセスメント「HUCRoW(フクロウ)」では、一人ひとり異なる「ワーキングメモリのタイプ」を測ることができ、それぞれに合う学習アドバイスが得られます。今回はこのHUCRoWを国内で唯一(※)分析されている野瀨先生にお話を伺いました。
※ワーキングメモリアセスメント「HUCRoW」は広島大学大学院教授、一般社団法人ワーキングメモリ教育推進協会代表理事の湯澤正通先生が開発しました。野瀨さんが一次採点、分析を行い、それを湯澤正通先生が目を通し、受検者の方へフィードバックがされています。
インタビューにご協力いただいた専門家
野瀨 まなみ さん
一般社団法人ワーキングメモリ教育推進協会
理事
株式会社インフィニットマインド
上級インストラクター
大学を卒業し、九州大手進学塾にて講師を務めた後に、株式会社インフィニットマインドに入社。上級インストラクターとして各種講座講師としてこどもたちの指導にあたる。
2021年より一般社団法人ワーキングメモリ教育推進協会理事に就任。代表理事の湯澤正通先生と共にアセスメントHUCRoWの普及ならびにオンラインにてワーキングメモリに関する研修会、セミナーの開催を行い、これまでのべ約3,000名以上の方々が参加。
「ワーキングメモリのタイプ」を知るアセスメントHUCRoWの結果レポート作成業務は国内で唯一その権利を有している。
アセスメント「HUCRoW」を通して「学びの個性」を知る
「HUCRoW(フクロウ)」では、こどものどのようなことがわかるのですか?
野瀨さん:一言で言うと、ワーキングメモリのタイプがわかるテストで、こども一人ひとり異なる「学びの個性」がわかります。
ワーキングメモリのタイプとは何ですか?
野瀨さん:ワーキングメモリのタイプには、言葉や音を聞いて理解・記憶するのが得意なタイプと、視覚的に見て記憶・理解するのが得意なタイプの二種類があります。
なるほど…。それはこどもや保護者様、先生方にとって大切な情報ですね。
ワーキングメモリのタイプを知ることで、学習にはどのように役立てられるのでしょうか。
野瀨さん:基本的には、強い方の力を活かして学習を進めた方がこどもにとって、負担が少なく情報が入り易くなります。また、ワーキングメモリのタイプを把握することで、特に就学前のこどもであれば、就学後の学習のつまずきや困難を予想することができるので、事前に予防をしたり、弱い部分の成長を促すサポートが可能になります。
「ワーキングメモリ」を測ることができるアセスメントは他にないのでしょうか?
野瀨さん:「WISC(ウィスク)」という知能検査の検査項目の1つとして「ワーキングメモリ」を測定するものがありますが、ワーキングメモリだけを測定する、ワーキングメモリに特化したアセスメントは国内で「HUCRoW」だけになります。
「HUCRoW」と「WISC」の違いをもう少し詳しく聞かせてください。
野瀨さん:「WISC」は医療機関、教育支援センター、民間施設などで、検査者と受検者が、個別対面で実施する必要があり、予約や結果が出るまでの時間が検査場所によって異なります。また、個別対面実施なので、こどもが緊張して(本来持っている)力を発揮しにくい場合もあります。
一方で、「HUCRoW」は、家庭や学校、療育施設など日頃よりこどもが慣れている場所で、検査者がパソコン等を使ってウェブ上で実施する形式となっています。特に発達障害の特性や様々な特性を持つこどもにとっては、緊張をすることなく、実施できる傾向にあるためこどもの持つ能力を発揮し易くなっています。結果もプランによって異なりますが、1か月~1か月半程度でお返し可能です。
両アセスメントの結果はそれぞれどのように活用されているのでしょうか?
野瀨さん:「WISC」は、全体的な認知能力を表す全検査IQと指標をそれぞれ数値化し、こどもの発達状況や、子どもの得意・不得意などの発達のバランスを知るための検査ですが、「HUCRoW」は学習に特化したもので、学習上の困難やつまずきの原因を分析し、それに対するサポートや支援、より伸ばすポイントをご提案しています。
そのため、学習の観点でお悩みの方には「HUCRoW」はとてもおススメの検査になります。
「HUCRoW」を受ける時間はどれくらいかかりますか?
野瀨さん:HUCRoW」には、2種類あります。まず、就学前のこどもを対象とした「簡易版HUCRoW」は、2課題の構成となっていて、15~20分程度で終了します。
次に6歳から15歳を対象とした「通常版HUCRoW」は、8課題(Game)があり、すべてを一度に受ける場合、90分~120分程かかりますが、多くの方は1~2課題ずつ数週間に分けて受検されています。
「HUCRoW」は間隔をあけて受けることができるのですね。
野瀨さん:はい、そうです。アセスメントの受検に際して「こどもの集中力が続くか心配」とお考えの保護者様には大きな安心材料となっています。
「WISC」の方の時間はどのくらいなのでしょうか?
野瀨さん:「WISC」の実施における所要時間としては約60分~90分程度で、対応も受検される施設によって様々です。受検される場合、事前に相談やお尋ねされるといいかも知れません。
「HUCRoW」を受けられる方はどの年齢層が多いのでしょうか?
野瀨さん:特に新学期から夏休み前の時期は小学3年生~4年生が多く、その後の時期(夏休み以降)には小学1年生や中学生なども増えてきます。
「HUCRoW」を受ける方は、どのようなきっかけでお問い合わせをされるのでしょうか?
野瀨さん:保護者の方がこどもの学習に困難を感じたり、学校の先生から注意を受けること、友達とのトラブルが増えたと感じたりすることがきっかけとなることが多いです。
既に「HUCRoW」を受けられた方からのご紹介、インターネット検索、当協会のセミナーにご参加いただいた方などから「HUCRoW」にお問い合わせをいただいています。
「HUCRoW」を受けた保護者様からはどのような声が届いていますか?
野瀨さん:最近印象的だったのは、発達障害の可能性やワーキングメモリが低いのではないかと心配していた保護者の方が、「HUCRoW」を受けてみると平均以上の能力があることがわかり、学習の方法を含め環境などを見直すことで解決したというケースです。
つまり、ワーキングメモリが問題ではなく、睡眠や食事、勉強方法などに問題があったということです。こうしたケースでは、面談などで具体的な学習アプローチを提案することもあります。
アセスメント結果の点数だけでなく、こどもに合う学習方法を提案されているのですね。
野瀨さん:はい。レポートには結果だけでなく、その結果に基づいた解釈や、具体的な学習法やトレーニングの提案も含まれています。また、面談ではさらに詳しいお話をさせていただいています。面談では、保護者様のお考えやお取り組みなどをお伺いできるので、私にとってもとても有益な時間です。
保護者様がお感じになっているこどもの特性と「HUCRoW」の分析結果が一致しないことはよくあります。これは新たな発見の機会であり、すぐにこどもとの関わり方を見直される保護者様も多くいらっしゃいます。
WISCなどのアセスメントをお受けになった後、HUCRoWの結果と併せてアドバイスをさせていただくこともございますので、ぜひ多面的にこどもの学びの特性を把握するきっかけにしていただきたいと考えています。
ワーキングメモリ教育推進協会
野瀨 まなみ さんインタビュー
インタビューにご協力いただいた
企業様のご紹介
一般社団法人ワーキングメモリ教育推進協会
819-1117
福岡県糸島市前原西1丁目8-27第2広瀬ビル 201・202
ワーキングメモリ教育推進協会は、湯澤正通を代表理事として2020年に設立されました。
湯澤 正通 代表理事 は、広島大学大学院人間社会科学研究科教授でもあり、ワーキングメモリ研究の第一人者です。湯澤 代表理事が科学研究費助成事業で開発した、こどもの学びの特性を知るワーキングメモリのアセスメント「HUCRoW」(Hiroshima University Computer-based Rating of Working Memoryの略称)を提供。「HUCRoW」は、湯澤代表理事と理事 / ㈱インフィニットマインド 上級インストラクター 野瀨まなみさんがレポートを作成し、保護者との個別面談をされています。
法人様からのご依頼での勉強会や研修会も随時実施。2021年以降、定期的にワーキングメモリや「学びの個性」「学びの個別最適化」等をテーマにセミナーや勉強会を開催し、これまでのべ約3,000名以上の方々が参加されています。