「本の税金」ゼロへ!
スマホが奪った「読解力」を取り戻す 

デンマークの教育改革
「子どもへの投資」を考える

Overseas Education News #01 Denmark’s Bet on Reading

スマホの普及による「読書離れ」「読解力の低下」は、日本もデンマークも共通の課題です。しかし、その危機への「打ち手」において、デンマークは日本とは全く異なる大胆な決断を下しました。「読書危機」が懸念される中、デンマーク政府はより多くの市民に書籍を購入してもらうことを目指し、書籍にかかる消費税を廃止したのです。

「読解力の低下」という共通認識

まず注目すべきは、デンマークの15歳の24%(約4人に1人)が「簡単な文章を理解できない」という衝撃的なデータです。デンマークでは、過去10年で読解力が4ポイント悪化しています。「読解力は、民主主義を支える知性そのもの」という認識から、「国の未来を揺るがす静かなる危機」と政府が警鐘を鳴らしています。

日本も人ごとではありません。最新のPISA調査では日本は上位を維持しているものの、SNSの短文に慣れた子どもたちの「長文読解力の低下」は常に議論の的となっており、教育現場での共通認識となっています。『AI vs 教科書が読めない子どもたち』(新井紀子著)では、日本の子どもたちの読解力が低下していることを独自の調査から紐解いており、同氏が開発したRST(Reading Skill Test)は多くの教育現場で使われています。

税金はペナルティ?

こうした現状に対する両国の対応策をご紹介します。

書籍にかかる消費税

まずデンマークでは、これまで欧州最高額の25%だった書籍にかかる消費税を「完全にゼロ」にすることを決めました。(英国などの国々ではこの消費税がゼロです)
一方、日本では、食料品などに適用される「軽減税率(8%)」がありますが、書籍は10%のままです。

日本では本を「嗜好品」に近い扱いとしているのに対し、デンマークは「本への課税は、国民が知識を得ることへのペナルティだ」と考え、それを完全に撤廃しようとしています。

「教育投資」の考え方

デンマーク政府の決断は、減税という意味合いだけではなく教育への投資」としての側面が際立っています。この無税化による税収減は、年間約76億円に上ると推定されています。しかし、ヤコブ・エンゲルシュミット文化相は「読書危機を解決するために、できる限りのことをする」と明言しました。本を「高い買い物」にしないことで、すべての子どもが実物の本を自宅で手に取れる環境を保証しようとしているのです。

一方、日本では「子どもの読書活動の推進」を掲げており、学校や地域の図書館には多くの書籍を充実させています。そして、それらを無料で貸し出すという教育投資を行うことで子どもから大人までが読書に親しむ環境を整えています。

どちらが良いという視点ではなく、国により異なる課題感への対応策は、こどもへの「教育投資」を考えるうえでとても興味深いものです。日本では書店の閉店が相次いでいることが大きな問題となっています。子どもにとって本を「高い買い物」にしないという点はデンマークの事例が参考になるのではないでしょうか。