#61 見えないエレベーター(SDGs 10:人や国の不平等をなくそう)

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ガラスのタワーのエレベーターが静かに上がっていく。

エリアスはその前に立ち、鏡のように反射するドアをじっと見つめていた。

何年も、エレベーターに乗る人たちを見てきたけれど、エリアスにはその扉が開くことはなかった。

「きっと、選ばれた人だけがあの扉を通れるんだろう」と思っていた。

彼は古びた設計図を手に、そんな現実を受け入れようとしていた。

ある日、エリアスは夜の街角で、誰かが話しているのを耳にした。

清掃員が使われていない階段のことを教えてくれて、事務員が忘れた鍵の話をした。

そして、知らなかった道が少しずつ見え始めた。

「もし、エレベーターが使えないなら、自分たちの方法で上がろう」とエリアスは決めた。

彼はそのアイデアを紙に描き始め、ついにそれが現実になると信じていた。

最初は少しずつ、でも確実にその道がつながっていった。

人々が力を合わせて、上に行くための新しい道を作り始めた。

屋上から屋上へ、廊下から廊下へ、誰もが共に歩きながら、一歩一歩進んでいった。

もはや、エレベーターがないと感じることはなかった。

みんなの力で、タワーを超えることができたのだ。

ある日、エリアスはタワーの一番上に立っていた。

周りの景色は変わらなかったけれど、自分の目の前にはかつてなかった道が広がっていた。

エレベーターはまだ動いていたが、もうそれに頼ることはなかった。

エリアスは下を見て、まだやるべきことがあることに気づいた。