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町では水不足が続き、学校の蛇口には「節水」の紙。
六年生のミナは、友だちと作ったアプリ「MizuMap」で町の水の流れをAR表示し、もれを見つけては地図にピンを立てていた。

ある夕方、古い配管をカメラでのぞくと、画面の中に小さな光の粒が現れた。
「わたしはスイ。水の精だよ」
スイは、もれて失われる一滴一滴の“声”をミナに聞かせてくれた。「助けて」とささやく声は、風鈴の音のように小さい。けれど、集まると川の音になる。
ミナたちは動きだした。学校の屋根には雨水タンクとセンサーをつけ、満水になるとアプリに通知。体育倉庫の横には砂と炭の“バイオろ過器”を設置。手洗い場は非接触の蛇口に変え、手を20秒洗うとライトが虹色に光る“手洗いクエスト”を開始した。

トイレは明るくし、だれでも安心して使える個室と、清掃状況が見えるメーターを導入。地域の人も「今日の清掃、完了!」とアプリで報告できる。
地図のピンは、修理が終わるたび赤から青へ、やがて星に変わった。星が増えるほど、水の精たちは強く輝き、町の上空に薄い虹の弧が現れる。
「みんなが水をたいせつにした分だけ、世界は色を取り戻すんだ」スイは笑った。

ある夜、アプリの“手洗いゲージ”が満タンになった瞬間、校庭のスプリンクラーから細いミストが上がり、小さな雨の竜が姿を見せた。竜は雲を連れてきて、畑と貯水槽をやさしくうるおした。翌朝、欠席は減り、汲み出しに使っていた時間は読書と遊びの時間に変わった。
集会でミナは言った。
「水はだれかのものじゃない。つなげて、守って、分け合う資源です。」
拍手の中、ARの地図には新しい星がまた一つ灯る。スイの声が聞こえた。
「きれいな水は、魔法じゃない。みんなの小さな行動の積み重ね――それがいちばんつよい魔法だよ。」
