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サニーは庭の真ん中で育つ、元気なひまわり。
毎朝、太陽のほうへ顔を向けるのが日課でした。
ところがある日、空は白いもやでおおわれ、光は弱く、夜になると町の明かりも心細いほど。
「太陽さん、どうしたの?」サニーがつぶやくと、風見鶏がカタカタと鳴り、庭の仲間が集まりました。
ハーブのミント、畑のトマト、そして近所に住む子どもたち。
みんな同じ不安を抱えていました。

「光が足りないなら、ためて、分ければいい。」そう言ったのは、理科が得意なリオ。
子どもたちは家の屋根に太陽光パネルを取りつけ、サニーたちは丘の上で止まっていた小さな風車の羽を磨き、向きを調整しました。
庭の片すみには共有バッテリーを置き、昼の電気を夜に回す仕組みをつくります。
サニーは葉で風をあおぎ、ミントは香りで虫を遠ざけ、トマトは影をつくって機器を冷やしました。
「ぼくたちにも、できることがあるんだね。」

しばらくして、曇っていてもパネルには淡い光が集まり、風車はそよ風でもくるりと回りました。
夜、庭の小道にはLEDのランプが点々と灯り、共有バッテリーから教室の読書灯へ、井戸のポンプへと静かに電気が流れていきます。
「弱い光でも、無駄にしなければ力になる。」リオが言うと、サニーはうなずきました。
そんなある晩、にわか雨があがると、西の雲が裂け、太陽の残した橙色のかけらが空ににじみました。
サニーは思いきり背すじを伸ばします。
「太陽さん、ぼくらはあなたを待つだけじゃないよ。あなたの恵みを、大切に回して暮らしていくから。」
その声に応えるように、翌朝の光は少しだけ強く、風車は軽やかに歌い、パネルの上で光が跳ねました。

やがて町では、昼のあいだにためた電気をみんなで分け合う暮らしが当たり前になりました。
停電の日も、読書会の灯りは消えず、井戸の水は静かにくみ上がります。
サニーは黄色い花びらを広げて言いました。
「クリーンエネルギーは、遠い国の大きな発電所だけのものじゃない。ここにいるわたしたちの工夫で、今日を照らせるんだ。」
そして庭では、風が吹くたび風車が歌い、太陽が顔を出すたび、パネルがきらりと光ります。
サニーと仲間たちは知りました。ためて、分けて、無駄にしない。
その小さな積み重ねこそが、世界をあたたかくする本当の魔法なのだと。


