#62 変わらない街、咲き始めた花 (SDGs 11:住み続けられるまちづくりを)

英語など、日本語以外の言語で表示するには、こちらの言語セレクタをご利用ください。
※ページ右上にも言語セレクタがございます。

雨の夜、リオは一人で街を歩いていた。

普段は気にしない街角に目が留まった。

そこには、古びた看板が立っていて、近づくと薄い文字で「再生」の文字が見えた。

しかし、そこに集まっているのは、ただの数人の人々だった。

何も特別なことが起きるわけでもないのに、リオはその場所に足を止めた。

その時、目の前で一人の女性が声をあげた。

「私たちにできることは、無駄じゃない。」

その言葉に、周りの人々は何も答えなかった。

だが、彼女が手に持っていた小さな花の種が、リオの心に触れた。

静かに、その種を受け取りながらリオはただ黙ってうなずいた。

翌日、リオはその場所に戻ると、誰もいないはずの街角に、見慣れない光景が広がっていた。

誰もが見過ごしてきた壊れた壁の隙間に、花が咲き始めていたのだ。

誰かがそこに水をやり、気づけば少しずつその場所は色を取り戻していた。

それでも、誰もその変化を大きな声で称賛することはなく、静かな変化のままだった。

数週間後、リオはその場所を通り過ぎ、ふと立ち止まった。

街は何も変わったように見えなかったが、あの小さな花たちがひっそりと息をしているのを感じた。

そして、それこそが、本当に必要な変化だったと気づくのだった。