#64 嵐の向こうに (SDGs 13:気候変動に具体的な対策を)

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マヤは公園の端に立ち、沈んでいく空を見つめていた。

風が止まり、空はまるで嵐を迎える準備をしているかのように、重くのしかかってくる。

かつて広々と感じたこの公園も、今は嵐が来るたびに狭くなっていくようだった。

「あの心地よかった風は、どこへ消えてしまったの?」

足元の地面にじわりとこもる熱を感じながら、マヤは静かに息をのんだ。

山を見つめながら、忘れられた物に埋もれた世界の重さを感じていた。

翌日、マヤは街を歩きながら、人々の目に映る不安の色を感じ取っていた。

いつもと変わらぬ日常が流れているのに、どこか違う。

まるで地球が何かを訴えているのに、誰もそれに耳を傾けようとしないかのようだった。

マヤは深く息を吸い込み、決意を固める——嵐だけではない、もっと深い何かが、この世界を飲み込もうとしているのだと。

それから数週間、マヤは人々と向き合い、環境を守るためにできることを語り始めた。

声を荒げるのではなく、確かな未来を見据えながら、まだ間に合うのだと静かに伝えた。

立ち止まり、耳を傾ける人はほんのわずかだった。

それでも、マヤは知っていた——小さな火花が、大きな炎になることを。

次の嵐が訪れる頃、街の空気はどこか違っていた。

重く垂れ込めていたはずの空気が、少しだけ軽くなったように感じた。

誰ももう、風の脅威を語ることはなかった。

ただ、一緒に手を動かし、植え、再利用し、守るべきものを大切にしていた。

やがて嵐は静かに過ぎ去り、マヤは思う——それはきっと、地球が発していた声なき声に、誰かが応えた証だったのだ。