第2回「うつくし」は「美しい」じゃない?

古典原文
うつくしきもの。瓜にかきたるちごの顔。
雀の子の、ねず鳴きするにをどり来る。
―清少納言『枕草子』

現代語訳(小学生向け)
かわいらしいもの。瓜にかいてある子どもの顔。
ねずみの鳴きまねをすると、雀の子が飛び跳ねてやって来る様子もかわいいわ。

  • 「うつくし」は、昔は「とってもかわいい」「だきしめたくなる」という気持ちを表す言葉です。
  • 昔の「うつくし」は、今の「美しい」という意味ではなく、実は「かわいらしい」という意味で使われていたよ。
  • 清少納言は「うつくしきもの」という文章の中で、自分が「かわいい!」と思うものをたくさん紹介しています。
  • さらにもっと昔は、「うつくし」に「いとしい」という意味があったんだよ。
  • 古語の「うつくし」が現在の「美しい」という意味になったのは、平安時代後期ごろと言われています。
  • 奈良時代においては、「うつくし」は「慈し」に通じ、自分より弱いものにたいする慈しみの感情を表していたと言われています。平安時代初期頃から、小さなものに対しての「かわいい」「愛しい」という意味になり、その後、平安後期頃から現在の意味の「美しい」になったと言われています。美というよりは愛情、の意味合いが強かったのです。
  • 清少納言は著書「枕草子」で、自分が「かわいらしい」と感じたものを集めて「うつくしきもの」という章段で紹介しています。「にくきもの」「めづらしきもの」といったこの種の章段は「ものづくし」と呼ばれています。
  • 「かわいらしいもの」ベスト5など、お子様やお孫様と紹介しあってみるのもおすすめです。いろいろな世代の感覚の違いや、共通点などが見えて、面白いですよ。

記事作成者

長尾 一毅

合同会社Accompany 代表

15年以上にわたり小・中・高校生の国語指導を担当。読解力こそ全教科の基盤と考え、集団授業から個別家庭教師まで多様な教え方を実践し、生徒の理解度に応じた指導を行う。脳科学の知見を交えた問いかけと対話を重ねることで、「自分で考え抜き、答えを導き出す」習慣を育む指導に定評がある。