
「つながらない」から見えてきた宝物
ブラジルのスマホ禁止令が教えてくれる、教室の本当の役割
Overseas Education News #06 Look Up, Speak Out
日本では「GIGAスクール構想」により、一人一台の端末がある風景が当たり前になりました。デジタルを使いこなす力が求められる一方で、夜中まで画面に釘付けになる我が子を心配する親心は複雑なものです。そんな中、南米ブラジルでは「学校からスマホを完全に排除する」という、日本とは真逆とも言える大胆な改革が進んでいます。
そもそも学校に持ってこないという選択
日本の学校でもスマホの持ち込み制限はありますが、多くは「持ってくるなら預ける」「鞄にしまう」といったルールでの運用です。ブラジルでは、当初はスマホを預ける箱を用意していましたが、今では多くの生徒が「そもそも学校に持ってこない」という選択をしています。
日本では「緊急時の連絡」を考えて持たせる保護者も多いですが、ブラジルの子どもたちは「持たない方が友達と遊べて楽しい」という境地に達したといいます。スマホを「預ける手間」すら手放し、デジタルから物理的に距離を置く潔さは、今の日本にとって驚きです。

日本でもSNSを介したいじめは深刻な社会問題となっていますが、ブラジルではスマホを禁止したことで、意外な効果が表れました。全員がスマホの画面を見るのをやめた瞬間、すぐ隣で苦しんでいる友達のサインにみんなが気づけるようになったと言います。人間本来の「共感する力」が回復したのです。
何が子どもにとって本当に大切か
2025年1月、ブラジルのルーラ大統領は学校での携帯使用を全国的に禁止する法律に署名しました。これは、集中力の向上と成績アップが実証されたことを受け、国家として「教室をデジタル・デトックスの聖域にする」と決めたのです。
日本では、「デジタルをどう教育に組み込むか」を模索する一方で、ブラジルは「教育を守るためにデジタルを外す」という道を選びました。どちらが正しいというわけではありませんが、「何が子どもにとって本当に大切か」という問いに対し、ブラジルは「生の体験」という答えを出したと言えます。

ブラジルの子どもたちが取り戻したのは、かつての日本の放課後にもあった、他愛ないお喋りや目の前のことに没頭する「純粋な時間」という宝物でした。効率やスキルを追い求めるあまり、私たちは子どもたちから「今、この瞬間」をじっくり味わう機会を奪っていないでしょうか。デジタル先進国を目指す日本だからこそ、あえて「つながらない時間」をデザインするブラジルの勇気から、学べることは多いはずです。
