参考文献:『教師の勝算』
(東洋館出版社 Daniel T. Willingham著)

背景知識は、他の人が話していることや書いたことを理解するための助けになります。背景を知らないと、十分な理解ができないと言い換えることができます。

例えば、知り合いの人からメールで「あなたの娘さんが”イェグ”と付き合っているみたい」と言われても、”イェグ”という言葉が長期記憶になければ話が理解できません。(”イェグ”=強盗)

文章の書き手は、様々な読み手が100%相違なく、理解できるように事実の細部をすべてを文章に盛り込むことはできません。極端に長く、つまらない内容になりますし、読み手の背景知識はそれぞれ異なるからです。そうしますと、文章にはどうしても”欠落部”が含まれます。

文章の書き手は、読み手がその”欠落部”を埋める知識を備えていることを前提として書いています。書き手が前提とする知識と読み手のそれに差があると、読み手は文を理解できないでしょう。

書き手の立場から「読解」に必要なことを考えることで、あらためて子どもたちに必要な働きかけが見えてきます。

ある作品を読む際に、文章の読み手には背景知識を持っておくことが必要であり、学校の授業等では、読み手である生徒が背景知識を踏まえて深く読み、考える働きかけがなされています。

子どもたちが「言葉」や「概念」の知識を豊富に持つことが読解の前提となる、ということがお分かりいただけたのではないでしょうか。

記事作成者

秦 有樹

株式会社Progress CEO / 株式会社インフィニットマインド 代表取締役 / 株式会社学研エデュケーショナル 取締役 / 一般社団法人こども未来投資プロジェクト 理事

大学卒業後から現在に至るまで民間の教育機関で講師、フランチャイズ事業、総務、マーケティング、教材開発など幅広く職務に従事する。
2023/9/11 「ワーキングメモリを鍛える ながら脳トレ30」を出版。(4書店でビジネス書部門売上No.1を獲得)