あることを正確に覚えているかどうかを調べる記憶テストは、私たちが既に学んだ内容を長期記憶から呼び出す(想起する)練習になるため、効果を持ちます。

このテスト効果は、レディガーとカルピックによって報告されています。大学生を対象とした彼らの実験では、テキストを読んだ直後にテストを受けたグループとテストを受けずにテキストをもう一度読んだグループの2日後のテスト成績を比べました。

するとテスト・グループの成績が優れていたのです。一週間後のテスト成績を調べると、さらに両グループの成績差が開いていました。

彼らの結果は、学習内容を思い出そうとすることが効果的であることを示しています。つまり、私たちはテストを受けることによって学習した内容を真剣に緊張感をもって思い出そうとするわけですが、その想起努力が、ただ漫然とテキストを読み直すよりも記憶の定着に効果を持つということです。

『メタ認知で<学ぶ力>を高める』(三宮真智子著 北大路書房)

こまめな小テストは、テストによる想起努力に働きかける点で有効だといえます。

読解力の向上を図るにあたり、長期記憶から情報を取り出すことはワーキングメモリの働きの一つであることを私たちはこれまでに様々な場面でお伝えをしてきました。学習者同士で適度な緊張感を持ってテストをし合う、というのも良い学習法となるでしょう。

記事作成者

秦 有樹

株式会社Progress CEO / 株式会社インフィニットマインド 代表取締役 / 株式会社学研エデュケーショナル 取締役 / 一般社団法人こども未来投資プロジェクト 理事

大学卒業後から現在に至るまで民間の教育機関で講師、フランチャイズ事業、総務、マーケティング、教材開発など幅広く職務に従事する。
2023/9/11 「ワーキングメモリを鍛える ながら脳トレ30」を出版。(4書店でビジネス書部門売上No.1を獲得)